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まだ見ぬ未来をつくる
In the unseen world, a peaceful future awaits
one without disease, hunger, or strife.
Invisible World
Invisible WorldとはMilk.株式会社の
ハイパースペクトル技術による社会変革事業です。
Invisible Worldとは
Milk.株式会社の
ハイパースペクトル技術による
社会変革事業です。

Cancer: The Invisible Enemy見えざる敵、がん

がんは、いまや誰にとっても身近な病気です。
日本では、生涯のうち約2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで命を落とすと言われています。
しかし、次のデータをご覧ください。実は、多くのがんはステージ1で発見できれば「治る病気」なのです。
そのため、早期かつ正確な診断が非常に重要です。
ところで、そもそもがんはどのように診断されているか、ご存知でしょうか?

現在、がんの診断には「病理診断」と呼ばれる手法が一般的に用いられています。
これは、患者から採取した細胞や組織を顕微鏡で詳細に観察し、がんの有無や進行度、性質を見極めるものです。
目に見えない病変を可視化するこの工程は、医療の中でもとりわけ高度な専門性が求められる重要なプロセスです。
実は、がんの診断には病理専門医と呼ばれる医師が顕微鏡を通して細胞や組織を目視で観察し、
約200種類にもおよぶがんのタイプを識別しています。
この高度な診断には豊富な知識と経験が求められ、まさに医療の中でも高度な専門性が問われる分野です。
しかしながら、日本における病理専門医はわずか約2,700人、世界全体でも約10万人しかいません。
80億人を超える世界人口に対して、専門医の数は圧倒的に不足しており、
がん医療の質と均等な提供を考えるうえで、大きな課題となっています。

こうした専門医の不足や診断の負担の大きさから、実際に見落としや誤診が発生するケースもあります。
診断までに2週間以上の時間を要することも少なくありません。
さらに、細胞や組織を採取する過程には身体への負担が伴い、その過程で命を落とされる方も、
決して少なくはないのが現実です。

Next-Gen Cancer Diagnosisがん診断を次のステージへ─DXの可能性

下記2つの画像のうち、右側に映っているのは「胆管がん」と診断されたがん細胞です。
胆管がんは、病理専門医にとっても診断が極めて難しいがんのひとつとされています。
こうした難解な症例に対して、病理医は膨大な知識と経験をもとに、
細胞ひとつひとつを丁寧に観察しながら、慎重に診断を進めていきます。
ときには診断に迷うこともあり、そうした際には「カラーアトラス」と呼ばれる
病理画像の図鑑を参照し、過去の症例と比較します。
ほんのわずかな差異を手がかりに、似た特徴を持つがんを見つけ出していきます。
このプロセスには、高度な専門性と豊富な経験、そして集中力が求められます。

近年では、遺伝子検査や免疫染色といった新しい診断手法も登場しています。
これらは、がんの性質をより詳しく解析できる可能性を持つ一方で、適用できるがん種が限られていたり、
高額な費用や高度な設備を必要とするなど、さまざまな課題も抱えています。
そのため、現時点では病理診断に代わる決定的な手法とは言えず、
診断の現場に大きな変革をもたらすには至っていないのが実情です。

Revealing the Unseen“見えない”を可視化する、ハイパースペクトルカメラの力

がん診断の「DX化」―すなわち、より迅速かつ正確な診断を可能にする技術革新へのニーズは、世界的に高まっています。
その課題に応える革新的なアプローチとして、私たちが提案するのが「ハイパースペクトル技術」です。
この技術は、もともと宇宙開発のために生まれたもので、人工衛星に搭載され、地上の鉱物資源探査や軍事偵察など、
極限環境における高精度な観測に活用されてきました。
このカメラの最大の特徴は、人間の目を超える色分解能にあります。
通常のカメラは、人間の目の色覚に合わせて3原色(RGB)で光を捉えますが、
このハイパースペクトルカメラは、141原色を捉えます。
これにより、人間の目をはるかに超えた色認識が可能になります。

以下は、ハイパースペクトルカメラを顕微鏡に取り付けて撮影した画像です。
一見すると、通常の顕微鏡画像のように見えるかもしれません。
しかしこの画像では、任意の1ピクセルを指定するだけで、その部位の「スペクトル」と呼ばれる波形データを取得できます。
このスペクトルは、人間の目では識別できない微細な色情報を含んでおり、細胞のわずかな違いを高精度で捉えることが可能です。
私たちはこのスペクトル情報を細胞核ごとに取得し、AIに学習させることで、がんの予測に挑戦しました。
その結果、7種類の臓器において、がん細胞を90%以上の精度で識別できることが明らかになっています。
この成果は、従来の診断手法では見逃されやすかった微細な兆候を捉えるものであり、
病理診断の精度向上に大きく寄与する可能性を秘めています。
現在までに、この技術に関連する2件の特許を取得。
さらに、グローバル展開を視野に入れ、海外での応用にも積極的に取り組んでいます。
冒頭でご紹介した細胞画像をこのAIに解析させると、ご覧のようにがん細胞と正常細胞を自動的に識別することができます。
さらに、細胞ひとつひとつを個別に検出・分類することも可能です。
顕微鏡とカメラで撮影するだけで、これまで専門医が担っていた煩雑な作業を省くことができ、
効率的かつ客観的な診断支援を実現します。
この技術は、ハイパースペクトル技術とAIを組み合わせたシステム「ANSWER」として開発を進めています。
顕微鏡に取り付けたハイパースペクトルカメラで撮影し、その画像をアップロードすることで、
解析結果を得るというシンプルな流れです。
これにより、高精度なスクリーニングの実現だけでなく、診断プロセス全体の効率化も期待できます。
一方で、現在の技術では細胞採取を伴うため、患者の身体に一定の負担がかかるという
「侵襲性」の課題が依然として残されています。

しかし、ANSWERは、血液・唾液・尿といった体液中を流れるがん細胞の検出にも対応可能です。
この機能により、より低侵襲、さらには非侵襲的な検査の実現へと近づいており、
侵襲性の課題を克服する可能性が見えてきました。

A World Free From Illness病に苦しむ人のいない世界へ

私たちの第一の目標は、ハイパースペクトル技術を活用し、膵がんの早期発見に挑むことです。
膵がんは、現在もなお人類が克服できていない非常に難しい課題のひとつであり、早期発見は極めて困難とされています。
実際に、日本における膵がんの5年生存率はわずか8.5%と、他の臓器のがんと比べても著しく低いのが現状です。
膵がんが早期発見を困難にしている主な理由のひとつは、自覚症状がほとんど現れないことです。
さらに、正常な細胞とがん細胞の見た目が非常に似ているため、
CTや超音波エコーなどの一般的な検査でも見つけにくいという課題があります。
これらの要因が重なり合い、膵がんは発見が遅れやすい非常に厄介ながんとされています。

しかし、内視鏡を用いて膵液を採取する新たな技術と、私たちのANSWER技術を組み合わせることで、膵がんの早期発見という難題に対する突破口が見え始めています。
この取り組みを皮切りに、原発不明がんの診断や前がん病変の検知など、
現場で直面する多様ながん診断の課題にも挑戦し、解決へと導いていけると私たちは確信しています。
すでに現在、聖マリアンナ医科大学、東海大学、久留米大学の3施設にてフィージビリティスタディーを開始しており、
膵がん診療の最前線で活躍する7名の膵がん専門医の先生方が、この挑戦にご協力くださっています。
およそ1年半程度で医療機器としての承認を取得し、その後、販売を開始できる見込みです。
ビジネスモデルはCTやMRIと同様に、医療機関内に「ANSWER」を設置し、
患者様から検査料をいただく形で検査結果を提供する方式を想定しています。

すでに海外展開も本格化しており、2025年6月にはインド、7月には台湾に現地法人を設立しました。
今後は、米国食品医薬品局(FDA)の承認取得を経て、ASEAN諸国、インド、アフリカなど、
人口増加が著しい地域への導入をさらに加速させていきます。

The Spark of the Challenge挑戦の原点について

代表を務める私・中矢は、歴史ある街並みと、山や海の豊かな自然に囲まれた愛媛県で生まれ育ちました。

小学生のころは、さまざまなスポーツに取り組む一方で、SFやミステリー小説を貪るように読み、
好奇心に満ちた日々を過ごしていました。
しかし中学生になると、画一的で押しつけがましい教育に馴染めず、不登校に。
そのなかで、あるひとつの思いにたどり着きます。
どうせこの世界が面白くないのなら、
自分の力で面白く変えてやろう。
そう考えた私は、世界にインパクトを与えられる科学者を志すようになり、
ノーベル賞の受賞を人生の目標に掲げました。

高校卒業後、アメリカへ渡り物理学を専攻。
そこで出会ったのが、私の人生を大きく変える存在となる佐鳥教授でした。
元JAXA研究員であり、ハイパースペクトルカメラの開発者でもある佐鳥教授から、研究のいろはを学びました。
その結果、ハイパースペクトル画像とAIを組み合わせた研究から、
これまでに約50件の学術成果、7本の論文、3件の特許が生まれました。

特に佐鳥教授は、「ゼロからのものづくり」に強いこだわりを持ち、
ソフトからハードまで――人工衛星やハイパースペクトルカメラの開発を含む高度な技術を、
未経験の学生でも一から学び、実践できるレベルにまで育て上げてこられました。
私自身もその恩恵を受け、技術者としての基盤を築くことができました。
現在はその意思を受け継ぎ、事業を引き継ぐとともに、次世代のエンジニアを育て続けています。
Milk.株式会社には、強力な財務・メディカル分野のアドバイザー陣が参画しており、
産学官連携のもと、受託研究や共同研究を通じて事業の継続性を確保しています。
また、事業推進にあたっては、補助金や助成金も積極的に活用しています。

※2021年には、三井住友銀行・日興証券主催のピッチイベント「未来2021」でメディカル・ヘルスケア部門の最優秀賞を受賞。
2022年には、東京都主催の「AMDAP 先端医療機器アクセラレーションプロジェクト」に採択され、
最大6億円の助成金と専門家支援を受けることが決定
これまで医療分野での可能性をご紹介してきましたが、ハイパースペクトルカメラの応用は、医療にとどまりません。
食品、美容、インフラ――多様な産業に広がるその可能性は、今まさに開かれようとしています。

私たちは、「見えない世界」がたしかに存在することをテクノロジーの力で証明し、
人類がまだ気づいていない可能性に、光を当てたい。
そして、誰もが自由に夢を描ける未来を創っていきたいと考えています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
今後とも、Milk.株式会社にご支援・ご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

見えない世界には
病も飢えも争いもない
未来が広がっている

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